NASは外付けHDDやクラウドストレージと比べてどうなの?自宅や会社での使い方を解説します。
パソコンやスマホの容量が一杯になったときや重要なファイルのバックアップ先として、HDDやUSBといった外付けの保存領域を使われている方は多くいらっしゃると思います。最近ではオンライン上にファイル保管が出来るクラウドストレージサービスも多くなってきており、どの保存領域を使えばいいか迷ってしまいます。そんな保存領域の中で、「NAS」というネットワークHDDがあるのはご存知でしょうか?
ハードディスクの一種でありながら一般的な外付けHDDとは異なり、ネットワークに繋いで使うけれどもオンラインストレージとも異なるものです。この記事ではNASがどのようなストレージで、外付けHDDやオンラインストレージとはどういった違いがあるのかをお伝えします。自宅や会社でどのように使うのが良いのかといったおすすめ使用例も解説しますので、ストレージ選びに悩んでいらっしゃる方はぜひ参考にしてください。
ネットワークHDDと呼ばれるNASとは何か?
NASとはNetwork attached storage (ネットワーク・アタッチド・ストレージ) の略で、ネットワークに接続されたハードディスクのことです。ハードディスクはパソコンに内蔵されているものや外付けのものがありますが、NASは外付けのハードディスクの一種になります。写真や動画、たくさんのファイルによってパソコン内のHDDやSSDの容量がいっぱいになってしまうときがあります。そんなとき、NASや外付けHDDなどの外部ストレージにデータを移すことで、パソコン内のファイルを軽くすることができ、利便性の向上に繋がります。
NASの大きな特徴としては3つのことが挙げられます。
1、LANネットワークでの管理
2、HDDが2つ以上搭載。データ保存が安心
3、CPUやOSを搭載
第1の特徴はNASを設置することでLANネットワークでのデータ管理ができるということです。外付けHDDと言えばUSBでパソコンと機器を直接繋いでデータ転送を行いますが、NASではLANネットワークを使用します。そのためネットワーク内のものであれば、複数台のパソコンやタブレット、スマホのデータを一括管理することが出来るのです。また、保存されたものはネットワーク内でいつでも共有することが出来るので、共有フォルダのような役割も果たしてくれます。通常のHDDの場合は一台ずつしかデータ転送が出来ませんでしたので、複数人での同時使用には非常に有用です。ネットワーク内での管理と言いましたが、設定次第で外出先での使用も可能となります。
第2の特徴はNASに内蔵できるHDDの数です。NASのスペックとしてRAIDレベルというものがありますが、そのレベルによって2台以上のHDDを内蔵してファイルを管理します。RAIDレベルにより、ファイルを分割して保存したり、同じファイルを複数のHDDで保存出来たりします。それによって読み込みスピードが上昇することや、1台のHDDが故障してしまった場合でも他のHDDにデータがあれば復旧することが出来るといったメリットがあります。HDDは経年劣化による寿命もあり、故障により保存データが壊れてしまう危険性を持っているんです。会社での重要ファイルの情報管理については、複数のHDDで管理するNASは一般的なHDDよりも安全です。
第3の特徴として、NASはHDDでありながらCPUやOSが入っている点が挙げられます。通常のHDDはファイルのの書き込みと読み込みしかできません。保存領域としてはその機能でも十分ではあります。しかしNASは、CPUやOSを含むことで、PCのデスクトップのようなファイル管理画面を持っていたり、アクセスサポートをする機能がついていたりと、より利便性の高いものになっています。特に家庭用のNASの機能は多岐にわたり、NAS管理画面内に音楽や映像、その他ファイルに関する様々な管理アプリケーションを持っているものもあります。そうしたことは通常のHDDにはない特徴です。
NASと外付けHDDの違い
では、具体的にNASと外付けHDDにはどういった違いがあるのでしょうか。外付けHDDは基本的に、「1台のパソコンと繋いでデータの書き出しや読み込むをするもの」です。それに対してNASは、「LANを使用して同時に複数台の端末とデータ共有・編集ができる、複数のHDDを内蔵したもの」です。
LANを使用することで、外付けHDDでは出来なかった複数端末での同時ファイル共有ができます。複数台の端末を同時に繋ぐことが出来るので、ファイル管理を一元化することができます。そして同時に閲覧・編集することもできます。管理してあるファイルはネットワーク内で共有されますが、細かい権限の設定も出来ますのでセキュリティに関しても問題ありません。NASと外付けHDDの違いを一言でいうと、「HDDは1対1で、NASは1対LANネットワーク内の複数」となります。
NASとクラウドストレージ・共有フォルダとの違い
NASはネットワーク内でのストレージ管理ということで、クラウドストレージサービスとも比較されます。クラウドストレージは、「インターネット上で他者(クラウドサービス企業)が提供するストレージを、従量課金制で利用できるもの」と言えます。それに対してNASは、「自らが保有するストレージをネットワーク内の複数人が使えるようにしたもの」です。どちらもネットワークストレージですが、そのネットワークの意味するところは若干異なるのです。
まずはデータを誰が保管するかという点ですが、クラウドストレージはサービス業者に預け、NASは自らで保管するといったニュアンスの違いがあります。その際問題になるのがセキュリティについてですが、クラウドストレージでもセキュリティが非常に強化されたものもあります。しかし、セキュリティが強化されるとその分利用料金も高くなりますし、預けている以上完全に安心とはなりません。
また、NASは機材購入などで初期設置費用がかかるものの、一度購入すれば使用料金などはかかりません。(数年ごとにメンテナンスとしてHDDの買い替え費用などは発生します。) 一方でクラウドストレージは、一定容量までは無料で使えるところも多いですが、それを越えると月々の従量課金制となります。サイズの大きなファイルを預けるとなると月額数千円かかることもあり、長い期間で見ると割高になる傾向があります。
NASがLANネットワークを使ったストレージということで、共有フォルダとはどう違うのかといった疑問も多く見受けられます。社内PCで目にする機会も多い共有フォルダは、NASと同じくLANネットワーク内のPCでファイル保存・編集をすることが出来ます。覚えておくべきNASとの相違点は2つあります。1つは内蔵ストレージの容量を使うことです。NASのように外部HDDに保存してパソコン本体のストレージを空けるものではありません。もう1つは、ファイル保存元のパソコンの電源がオンになっていないと他のパソコンでは見れないということです。そのため最悪の場合、すべてのパソコンの電源をオンにしないと目当てのファイルを開けないのです。NASであれば同じ共有でもNAS本体のHDDにファイルが保存されているため他のPCの電源が付いていなくても問題ありません。
自宅でNASを使うメリット
自宅のテレビに録画されている番組が多くなってきた場合など、外付けHDDを購入してデータを移動するといった方も多いのではないでしょうか? また、デジカメの写真が多くなってきたのでUSBやCD-Rにデータを移されている方も多いと思います。
NASもそうした外付けストレージとして自宅で使うこともできます。家庭用に特化したNASというものも販売されており、法人用と比べ多機能型であることが多いです。家庭用のNASは以下のような用途で使えます。テレビの録画番組をNASに保存して、LANネットワーク内の他の端末で視聴する。デジカメで撮った高画質写真をNASに保存し、アプリで確認したり連携させたプリンタで印刷する。itunesなどの音楽データをNASに移動し、対応のオーディオプレーヤーで流す。メモリがいっぱいになっている家族のスマートフォンのデータを一括でNASに保存し、携帯のストレージに余裕を持たせる。
こうした使い方ができるNASを設置することで、ドラマをよく見てHDDをいっぱいにしている奥さんや、一眼レフでたくさんの写真を撮る息子さん、携帯のメモリがすぐにいっぱいになると嘆いている娘さんを悩みから救うことが出来るかもしれません。
基本的にNASはHDDと同じようにデータの保存をする場所です。なので、データのバックアップとして使ったり、各端末の容量を空けるための保存先として使われるかと思います。しかし家庭用のNASは保存だけでなく様々な管理も可能で、写真アルバムやミュージックプレイリストの作成などのより利便性の高い機能を持ち合わせているものも多くあります。写真やテレビ番組、音楽などそれぞれの用途に特化したNASがあるので、家庭内でどのような用途で使うことが多いかで選ぶことも出来るのです。
会社でNASを使うメリット
会社内においてはファイル共有は当たり前でしょう。共有フォルダを使ったり、オンラインストレージを使ったりと、いま現在でも何かしらの外部ストレージを使われているところは多いと思います。
会社でのNASを使うメリットは安全性の部分が最も大きいです。重要書類や顧客情報など、流出してはいけないファイルが数多く存在する社内。そうしたファイルは、「流出」と「紛失」というリスクから守らねばなりません。そのため共有フォルダで管理しているものでも、PC内だけでなく外部ストレージの利用が必要になります。そこで候補に挙がるのが、外付けのHDDやSSD、オンラインストレージ、そしてNASです。
それぞれの違いは先述しましたが、NASの持つ「複数HDDを使った自社管理によるデータ保存」はリスク管理において他のストレージより優れています。外付けHDDも経年劣化で壊れてしまうこともあります。1台の外付けHDDだけでの保存ではその中のデータが万が一破損してしまっていた場合、重要なデータを復旧できない可能性があります。そのリスクから守るためにも2台以上のHDDを持つNASは社内のファイル管理でより優れたものと言えます。
また、外部ストレージへの保存は個人のみならず企業でも非常にメジャーになっていますが、あくまでそのサービスは外部のものです。自社管理でないということでどうしてもセキュリティの心配もありますし、従量課金制度もサービス会社に完全に依存してしまいます。現在のサービスや金額が永続的に続く保証はどこにもないのです。そうした面で、外部ストレージを使うリスクも考えておかないといけません。
NASであれば、導入費用は通常の外付けHDDを購入したりオンラインストレージを使うよりも掛かってしまいますが、わずかな電気代と数年に一度のHDDメンテナンスで済ませることができます。自分の会社の情報は自分の所で管理したいという企業にはNASがおすすめです。
使用目的別NASの選び方
NASの使用用途を「家庭用」と「法人用」として分けた場合、それぞれどのようなNASを設置したらいいかをお伝えします。
まず家庭用に関して重視する点は「容量」です。会社で取り扱う主なファイルが文書ファイルであるのと比べると、家庭では、テレビなどの映像やデジカメで撮った高画質画像、音楽ファイルといった容量の大きなものが主になってきます。家族みんなで使えるようにということであればより大容量の保存が出来るものが良いでしょう。
また、録画番組においては他端末でも視聴できると伝えましたが、それはNASの機能によります。それを可能にするDTCP+といった規格や、録画番組をディスクにダビングするためのDTCP-IPといった規格に対応しているNASを選ぶ必要があります。家庭用のNASには様々な機能を持った機器が存在しますので、番組録画や高画質写真保存、音楽データの保管などメインの使途に合わせて選ぶといいと思います。
法人用の場合は、ひとつひとつのファイルの容量は大きくない代わりに、複数の人が同時にアクセスしても高速で動いてくれるものが必要になってきます。そのため、「容量・高速アクセス・セキュリティ」が選ぶうえで重要です。それらはNASのCPUやコア数、高速転送が出来るUSB3.0タイプかといったスペックで判断します。NASは2台以上のHDDを内蔵してファイルを管理するので安全性が高いと先述しましたが、法人用のものだと4つ以上のHDDを内蔵しているハイスペックな機器も存在しますが、その分導入費用は高くなります。
このようにNASは外付けHDDとオンラインストレージの間に位置するようなストレージです。それぞれにメリットデメリットが存在しますが、選択肢のひとつとしてぜひNASによるファイル管理も検討してみてください。