有線LANを無線LAN対応にできる変換機「イーサネットコンバーター」の紹介
インターネットや家庭内のネットワークに接続することで、様々な機能を便利に使うことができるデジタル家電類が増えてきています。
しかし、機種によっては「有線LANのみ対応」という規格のものもあり、配線や配置について頭を悩ませた経験があるという方も少なくないようです。
今回は、そんな有線LANにしか対応していないデジタル家電やデジタル機器を無線LAN対応機のように扱うことができるようになる便利な変換機「イーサネットコンバーター」をご紹介します。
イーサネットコンバーターとは?
イーサネットコンバーターという名前に聞き覚えがあるという方は、もしかしたら既にパソコンと長い付き合いのある方かもしれません。
まだメーカー製のハイスペックパソコンが高価だった10年ほど前までは、自分で用途に合わせてパソコンを自作する人も多く、無線LANアダプタの搭載が難しかった自作PCを無線化する方法の一つとして、イーサネットコンバーターがよく用いられていました。
有線LANと無線LANの間の「中継」をしてくれる機械
イーサネットコンバーターとは、簡単に言うと「有線LANにしか対応していないパソコンやデジタル機器を無線通信のような扱いにできる機器」のことです。
しかし、これだけの説明では簡潔すぎてなんだかよく分からないのではないかと思います。イーサネットコンバーターの機能を順番に説明していきましょう。
有線LANでしか接続できないデジタル機器があります。通常ならばその機器のLANポートから、そこで使用しているモデムやルーターのLANポートまでをLANケーブルで接続しなければ、その機器の通信機能は使用できません。
しかし、イーサネットコンバーターを使用すれば、デジタル機器からイーサネットコンバーターまでをLANケーブルで接続するだけで、ケーブルによる接続と同じように使用することができるようになります。
つまり、イーサネットコンバーターは「モデムやルーターからイーサネットコンバーターまでの有線LANによる接続を、無線での通信に置き換えてくれる機器」なのです。
「無線LANアダプタ」との違いは?
同じように有線LANのみ対応の機器を無線化してくれるアイテムとして「無線LANアダプタ」というものがあります。これはUSB接続口やカードスロットに差し込むことで、接続した機器を無線での通信に対応させてくれるという優れものです。一見似たような用途での使用に思えますが、この二つは何が違うのでしょうか。
無線LANアダプタとイーサネットコンバーターの最も大きな違いは、「LANポートを使用するかしないか」という点です。無線LANアダプタはUSBポートやカードスロットに挿入して使用するものが多く、LANケーブルを接続するためのLANポートは使用しません。
それに対してイーサネットコンバーターは、デジタル機器をイーサネットコンバーターまでLANケーブルで接続しなければ使用できないので、LANポートを使用します。
有線LANと無線LANとは?
有線LANとは
有線LANとは、デジタル機器のLANポートから通信変換機のモデムやルーターまでの間をLANケーブルで接続して通信する通信形式のことです。ケーブルで直接接続するので通信が安定し、通信速度も速いという特徴があります。
また、電波の干渉を受けにくいので、ネットを使っている最中に電子レンジやBluetoothを使用して回線が不安定になる、といったことも起きにくいです。
ただし、ケーブルの長さよりも遠い場所では使用できない、ケーブルが絡まるなどの欠点もあります。
無線LANとは
無線LANは、有線LANのようにLANケーブルを接続するのではなく、ルーターから電波を飛ばして、それを無線LANアダプタという機器でキャッチすることで通信する通信形式のことです。
LANケーブルのような線を使用して通信をしないので、無線LANと呼ばれています。ケーブルがないので持ち運びが効き、ケーブルの絡まりなども気にすることがないので利便性が高いのが特徴です。
一方、電波を使用して通信するのでどうしても有線LANよりも通信速度が落ちる、電子レンジやBluetoothなどの電波障害を受けることがある、障害物や遮蔽物があると通信強度が落ちる、などの欠点もあります。
イーサネットコンバーターを使うとなにができる?
ルーターからのLANケーブルを省略できる
イーサネットコンバーターは、モデムやルーターからの無線通信をキャッチして、有線LANでの通信に変換してくれる装置です。そのため、モデムやルーターなどの無線LANの電波を発している機器から、イーサネットコンバーターまでの間のLANケーブルを省略することができるようになります。
ルーターからデジタル機器までの間のLANケーブルが絡まらないように、床に固定したり、壁に這わせたりといった手間も同時に省略することができ、見た目にもすっきりします。
無線LANアダプタが使用できない機器を無線接続のように使える
無線LANアダプタを使用するためには、USBポートやカードスロットなどが必要となります。また、接続した後に接続の方法や回線の名前などを指定して設定しないと使うことができません。
しかし、イーサネットコンバーターならLANケーブルを差し込むポートさえあれば使用することができます。有線LAN対応のみで無線LANアダプタが差し込めない、設定ができないというデジタル機器を無線化したい場合、無線LANアダプタよりもイーサネットコンバーターのほうが便利です。
イーサネットコンバーターの便利な使い方
一度に複数の機器を無線対応にできる
無線LANアダプタは通常、一つの機器に一つのアダプタが必要となります。そのため、レコーダーにテレビにゲーム機に、といった複数の機器を無線LANアダプタで無線対応させようとすると、その分だけ無線LANアダプタを用意しなければなりません。
しかし、イーサネットコンバーターなら、LANポートが複数個ある製品を使用すればその分だけ一度に無線通信に対応させることができます。特にテレビ周辺、パソコン周辺など、まとまったいくつかの機器を無線対応にしたいという場合には、無線LANアダプタよりもイーサネットコンバーターの方が効率的です。
Wi-Fiの規格が古い機器を11n、11acなどの最新の規格で接続できる
デジタル機器の中には、無線通信には対応しているものの対応しているWi-Fiの規格が古い、といったものが存在しています。数年前に購入した型落ち品のテレビやゲーム機などのWi-Fi接続での通信速度が他の機器よりも遅いと感じたら、その原因はWi-Fi接続の規格が古いことかもしれません。
Wi-Fi接続の規格とは、簡単に説明すると「そのWi-Fi機器が接続可能な電波の周波数帯」のことです。11n、11acなどの名前で規格が表記されています。11a、11bなどの古い規格よりも、11n、11acなどの新しい規格の方が電波が強いので、通信速度が速く接続も安定するという傾向があります。よくパソコンを使いながら電子レンジを使うと通信の調子が悪くなると言います。
それは電子レンジの発する電波とWi-Fi接続の電波の形が似ているので、同時に使用するとお互いに電波がぶつかってしまい、通信に悪い影響を与えているのが原因です。
古い規格のWi-Fiを使っていると速度が落ちるだけではなく、他の機器とぶつかって通信の障害となることもあります。このようなWi-Fiの規格が古い機器でも、イーサネットコンバーターで接続すると有線接続と同じ扱いになるので、通信の高速化が見込めるようになるのです。
イーサネットコンバーター導入時の注意点
LANケーブルが不要になるわけではない
イーサネットコンバーターは、「ルーターからイーサネットコンバーターまでの間の通信を無線通信に置き換えることができる装置」です。
ここで気を付けたいのは、イーサネットコンバーターまで中継された電波をデジタル機器まで届けるのにはLANケーブルが必要、つまり「イーサネットコンバーターとデジタル機器の間は有線LANになる」という点です。
無線LANアダプタと違い、イーサネットコンバーターにはLANケーブルが必要となります。そのため、導入時にはイーサネットコンバーターをどこに設置するかだけでなく、接続したい機器とイーサネットコンバーターの間の距離を大体で良いので測っておくことが大切です。
有線接続扱いだが通信速度が上がるかどうかはわからない
一般的に、無線接続よりも有線接続の方が通信速度が速く、安定した通信が可能です。
しかし、イーサネットコンバーターによる接続は有線接続と同じ扱いにはなりますが、有線接続と同じ通信速度が出るかと言われると、残念ながら出ないことの方が多いと言わざるを得ません。
無線による通信は、壁やドアなどの障害物に通信の速度や強度が左右されることがあります。強力な電波を発するタイプのモデムやルーターを使用していても、家の構造によっては記載通りの速度が出ていないということもよくあるのです。
イーサネットコンバーターは、イーサネットコンバーターとモデムやルーターの間が無線化されてしまうので、有線接続扱いでも通信の規格は無線と同様になります。
そのため、家の中の電波強度が低いと、思ったように速度のある通信ができないということも十分考えられます。有線接続扱いにはなりますが、実際の通信速度は無線の機器の速度に準じる、と考えておくと良いでしょう。
イーサネットコンバーターでデジタル家電をもっと便利に!
イーサネットコンバーターを使用することで、無線化を諦めていたデジタル家電の無線化や、速度の遅いWi-Fi規格しか使えないデジタル機器の通信を高速化することができるようになります。
イーサネットコンバーターは低価格の商品も増えており、高機能なものでも1万円以下で手に入るものが多いです。レコーダーやテレビなど、機能を生かし切れていないデジタル家電が複数台あったら、是非イーサネットコンバーターの導入を検討してみてください。