UPS(無停電電源装置)とは?
突然ですが、パソコンといった電子機器の停電対策はしていますか?日常的に使用する機械の多いパソコンは、内部に重要なデータが入っている重要な機器の1つ。そんな中で問題となるのが停電です。
停電が起きた場合はパソコンの電源が強制的に落ちる原因となり、最悪の場合はデータ消失や機器の破損を伴います。パソコンだけでなくデータを保持する機器・サーバーなどを管理しているという方は、停電による影響を考えなければならず、対策を怠ると危険です。
そこでおすすめなのが「無停電電源装置」と呼ばれる機器。簡単に言えばパソコンなどの機器を停電といった事象から保護し、データや機器そのものの破壊を防止できます。今回はそんな無停電電源装置について、おすすめや種類、使い方から選び方まで網羅的に紹介。
普段からパソコンを使っている方や自宅サーバーを所有している方に向け、初心者向けのやさしい解説をするので、参考にしてみてください。
無停電電源装置(UPS)とは?機器の故障を防ぐ救世主
無停電電源装置とは、雷や何らかの原因で電気が止まった際に活躍する機器。停電時は電源が断たれるためパソコンなどの機器も強制シャットアウトされますが、無停電電源装置があれば蓄積した電力を予備として供給できます。
パソコンなどの機器は強制的に落ちた場合にデータや本体の破損・故障に繋がるものの、停電の際は予備電源に瞬時に切り替えられるためそのまま使い続けることが可能。その間に正規の手順で電源を落とせば、結果的にパソコンといった機器を保護できるのが魅力です。
注意点として、無停電電源装置が予備電源を供給できるのは数分から数十分の時間に限られます。長時間の停電に対処する場合は、発電機や別の電源を用意しなければなりません。
なお、無停電電源装置は英語で「Uninterruptible Power Supply」と表記され、略すと「UPS」という名称です。以降の内容ではUPSの表記で解説を進めます。
無停電電源装置(UPS)は大きく分けて3種類
UPSは運転方法により、主に3種類の方式に分かれます。停電時に普通の電源からUPSの予備電源に切り替える際の挙動や、平常時の動作が異なるので、それぞれの特徴を解説。
一般向けで低コストな「常時商用給電方式」
常時商用給電方式は、平常時には普通の電源からそのまま機器に出力しつつ内部バッテリを充電。停電が発生した際は内部バッテリによる電源供給に切り換えることで機器を保護する方式です。
予備電源の切り換えをシンプルな回路で判断して行われるものの、瞬間的な電源遮断は発生するため動作が不安定になったり、機器によっては落ちたりするのが難点。
一方UPSのなかでは11,000円以下で購入できたり33,000円前後でも手に入ったりするお手頃価格になっているほか、別方式よりも無駄な電力消費が少ない点や本体がコンパクトなところが魅力です。本格的なUPSを導入するというよりは、家庭用の機器を停電から守りたいという一般の方におすすめの方式といえます。
瞬断に徹底対抗できる「常時インバータ方式」
常時インバータ方式は、普通の電源を常に安定した電力に切り替えたうえでバッテリに蓄電。バッテリに蓄電された電力が平常・停電時問わず使われるため、瞬間的な電力遮断もなく安定して使える方式です。
用途としては絶対に保護したい機器などに使われるので、企業のサーバーやストレージのほか業務用に稼働しているものと合わせて使うのが一般的。いっぽうで本体や稼働音が大きいほか、安定した電力に変換する複雑な手順が常に行われるため電気代が高くなります。
また、製品としても33,000円以上だったり中には110,000円を超えたりする価格設定なので、経済的にはよくありません。一般家庭で実装する場合は費用を一切気にしないという方におすすめ。そのほか企業として何らかのサービスを展開している場合には必須です。
上記2種をいいとこどりした「ラインインタラクティブ方式」
ラインインタラクティブ方式は、常時商用給電方式と同じような挙動を持つタイプ。違いとしては電圧を安定化するための仕組みを採用していることです。急な電圧変動が起こった場合でも出力が安定するため、停電時の瞬間的な電源遮断を抑えることが可能。
常時商用給電方式における電源切り換え時の不安定さを取り除いたような方式といえます。立ち位置としてはほか2種類の中間。価格は11,000円から110,000円程度あれば購入できるので、常時商用給電方式ではもの足りないけど常時インバータ方式は手が出せないという方におすすめです。
業務用として導入する場合は、停電時の影響が少ない部分に採用するのが適切。ユーザーと関わる部分や影響が大きな部分には推奨できません。
無停電電源装置(UPS)おすすめの使い方
UPSの目的は瞬間的な停電や急な電圧変動、雷による停電などから機器を保護することにあります。そのため、パソコンを含む機器の故障やサーバーなどのデータ・ファイルの破損を防ぐような使い方が一般的かつおすすめです。
特にユーザーに対する何らかのサービスを展開している企業・個人には必須。UPSを使わなかった結果、サービスに関わる機能が停止した場合、利用者も使えない時間が発生するため莫大な損害を発生させる可能性もあります。
1人あたりの損害が少なくても、利用者が多いほど被害は増加。塵も積もれば山となるということわざがあるように、損害額は利用者に比例して増えるため導入しているかどうかで事後の状態が天地の差です。
最悪の場合は損害賠償請求などを伴うこともあるので、サービスを展開しているなら必須。もちろん企業の内部で完結する部分であっても役立つほか、リーズナブルな製品を家庭用として導入する使い方もおすすめします。
無停電電源装置(UPS)おすすめできない使い方
UPSを利用するうえで注意しておきたいのは、あくまで予備電源として供給する間に正常な電源遮断をするか別電源に切り換えなければならないという点。電源供給時間は製品や接続機器によって異なるものの、短時間しか持たないので長時間のバッテリとして使うのはおすすめできません。
また、UPS内部のバッテリは数年程度の寿命を持つのが一般的ですが、高頻度で予備電源が使われるほど短命で終わります。普段から頻繁に停電が起きる場所など、電源が不安定な場所で使用するのはUPSの寿命を縮める原因になるので、家庭用電源に直接コンセントを繋ぐなど別の対処が必要です。
そのほか、UPSは高負荷を与える機器を接続するのはおすすめできません。例えばドライヤーやヒーター、エアコンといった消費電力の多い機器が推奨できない機器に該当します。
人命にかかわる医療・産業現場や電源遮断による影響が莫大な場面で使うのも非推奨。上記に挙げた使い方はおすすめできないので、運用方法を考えたうえで導入するか検討してください。
無停電電源装置(UPS)選び方における必須ポイント
UPSを実際に購入したいと思った方に向け、選び方における必ず見ておきたいポイントを紹介します。
出力容量は接続機器の最大消費電力を満たす必要がある
UPSには出力容量と呼ばれる確認項目が存在。出力容量はUPSに接続する機器を合わせた最大消費電力を上回る必要があり、満たさなければ動作が不安定になる恐れがあります。
コンセント数を見つつUPSに何を接続するかを事前に考え、機器の消費電力を合わせたうえで出力容量を満たすかを確認してください。一般的には出力容量が多いほど価格は高い傾向です。
入力電圧の最大・最小範囲
日本国内における普通の電源は、100・200ボルトの電圧が一般的です。UPSは電圧変動を感知することで予備電源に切り替える仕組みがあり、製品ごとに定められた範囲を逸脱した際に移行します。
この定められた範囲というのが、購入の際に見ておきたいポイント。入力電圧とも呼ばれる部分で、最小・最大の数値をスペックに記載するのが普通です。
範囲が広すぎてもUPSが機能しなかったり、狭いとすぐに切り替わりが発生したりするので、バランスを考えて購入することをおすすめします。
そのほか
そのほか購入する際に見ておきたいのは、充電時間・本体サイズ・価格など。
充電時間はバッテリの充電にかかる時間で、短いほど短期的な切り替わりにもすぐに対応可能。連続した停電やトラブルの発生を想定する場合は、短めの時間がおすすめです。
本体サイズはUPSの大きさ。小さいものはWi-Fiルーター程度から、大きいものはパソコンを超えるサイズまであるので、設置スペースを考えたうえで見極める必要があります。
価格に関しては11,000円前後から110,000円以上まで幅広く存在。低価格なものは常時商用給電方式が多くを占めるものの、予算と用途を考えて選んでください。
パソコン向け無停電電源装置(UPS)のおすすめを紹介
パソコンなど、一般向けに販売されるUPSのおすすめを簡単に紹介しておきます。
コスパのよいUPS「オムロン BW55T」
京都に本社を置くオムロンが販売する常時商用給電方式のUPS。5年間の長寿命バッテリを搭載しているほか、3年間の無償保証がついているのが魅力です。
LCDパネルがあり、バッテリの寿命や設定の確認が簡単にできるのもポイント。バッテリ交換は専用工具が必要ないため、知識のない方でも安心して行えます。
出力容量は550ボルトアンペア・340ワットに対応するほか、同シリーズの製品のなかには1,200ボルトアンペア・730ワットのものまで存在。通販価格はだいたい22,000円以下なので、エントリモデルとして購入するのもおすすめです。
リーズナブルなUPS「APC BR550S」
PSの販売シェアとしてはトップクラスの部類に入るAPCのモデル。ラインインタラクティブ方式を採用しつつ11,000円台の比較的お安い価格で販売されており、初めて購入する方にもおすすめです。
出力容量は550ボルトアンペア・330ワットで、バッテリの期待寿命は5年。大きさはそこまででもなく、パソコンの隣に違和感なく設置できます。
小型で激安のUPS「CyberPower CP375JP」
低価格かつコンパクトなモデルを販売することで有名なCyberPower製のUPS。常時商用給電方式を採用しているほか、雷による停電などから機器を守れます。
価格はUPSのなかでは11,000円以下で購入できる圧倒的なコスパを実現。出力容量は375ボルトアンペア・255ワットあるので、パソコン周辺機器のダメージをシンプルに保護可能です。
とにかく安いモデルが欲しい方におすすめします。
無停電電源装置(UPS)のバッテリは消耗品!維持費を考えて導入しよう
UPSについて初心者向けの解説をさせていただきました。そのうえで最後に知っておきたいのがバッテリの寿命。UPSは本体を購入する費用もそうですが、定期的なバッテリ交換が必要です。
バッテリの寿命は製品によって異なるものの、3から10年を超えるものまで幅広く存在。維持費としては電気代だけでなく、定期的なバッテリ購入という2つがかかることになります。
バッテリは消耗品で、寿命が近づいてくると蓄電能力も低下。最終的には蓄電もできず停電時の予備電源への切り換えにも対応できなくなるため、交換が必須です。
交換の期間は使い方やバッテリによって異なるものの、説明書などを確認するのが大事。家庭用・業務用問わず使用するならバッテリ交換は必要になるので、維持費も踏まえて導入してください。