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SSDとHDD、比較すると寿命はどっちが長い?SSDの寿命を予想できるTBWとは?
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HDD/SSD
2019.03.19
USBメモリを数年放置した結果、中のファイルが消えてしまったという経験のある人も少ないながらいると思います。その体験からSSDのようなフラッシュメモリストレージに不安を持つ方も少なからずいるでしょう。 またUSBメモリやSDカードは書き換え可能な上限回数や耐用年数がある程度定まっており、その年数は使われているフラッシュメモリの種類ごとに異なります。それぞれ“SLC 10万回程度/10年程度”、”MLC 3000~1万回程度/5年程度”、”TLC 500回/数年程度”と言われています。MLCやTLCが使われているSSDの寿命もそれぐらいではないのかと思う人も多いことでしょう。ですがご安心ください。上の数値はあくまでUSBメモリやSDカードなどの目安で、SSDはそれらよりずっと長寿命なのです。 その理由やHDDと比べた場合の寿命などを、筆者の実体験などを交えながら本記事では解説してみたいと思います。
この記事の目次
目次を開く
1.
SSDの中にあるフラッシュメモリ寿命についての基礎知識
2.
USBメモリやSDカードとSSDの寿命が異なる理由
3.
SSDの寿命の目安となるTBWとは?
4.
SSDの計算上の寿命
5.
HDDの寿命はどのくらい?
6.
結局SSDとHDDはどちらが寿命が長いのか?
7.
安定寿命を期待できるSSDメーカー
8.
長期保存する場合はHDDとSSDどちらが良いか?
9.
SSDやHDDの寿命(故障の兆候)を見逃さないようにするには?
SSDの中にあるフラッシュメモリ寿命についての基礎知識
SSDは「NAND型フラッシュメモリ」という媒体に記録するのですがその原理上、書き換え回数に限界があります。その限界回数(書き換えに使った総容量)が事実上の寿命となっています。これはSSD以外にも言えることで、先ほど例に出したUSBメモリや、SDカードなども同様です。 冒頭に述べたSLC、MLC、TLCとこれから増えるであろうQLCといったフラッシュメモリの違いもSSDの寿命に関係してきます。それぞれメモリ内の1つの枠(セル)の中にいくつの情報を書き込めるかという違いがあります。 ・SLC(Single Level Cell/シングルレベルセル)は、メモリ内の枠1つに1つの情報 ・MLC(Multi Level Cell/マルチレベルセル)は、メモリ内の枠1つに2つの情報 ・TLC(Triple Level Cell/トリプルレベルセル)は、メモリ内の枠1つに3つの情報 ・QLC(Quad Level Cell/クアッドレベルセル)は、メモリ内の枠1つに4つの情報 ざっくりと説明するとだいたいこんな感じです。厳密に言うとMLCは1つの場所に2つ以上(Multi=複数)の情報を書き込めるメモリすべてが該当するのですが、通例で2つ書き込めるメモリということになっています。 後半ほど1つの場所に詰め込むデータが多くなるので負荷が大きくなります。その結果書き込み可能な回数が減り、寿命も短くなります。反面1つの枠内に複数の情報を保存できるので、大容量のものを低コストで作れるので値段を下げることができます。 大容量のSSDであれば結果的に書き込める総容量も多くなるので、メモリ本体の書き込み可能回数が減ってもある程度はカバーできます。おなじTLCを使ったSSDでも、250GBより500GBのほうが、500GBより1TB(1,000GB)の容量のもののほうが、書き込み可能な上限値が大きくなるので寿命は長くなります。 技術の進歩でTLCやQLCが作ることができるようになりその結果、大容量のSSDやUSBメモリやSDカードが安価に手に入るようになりました。その分初期のSLCやMLCのものより、TLCやQLCを使う今のSSDやUSBメモリ内のフラッシュメモリそのものの寿命は短くなっています。ですが容量も大きくなったので一般的な用途なら寿命が縮まっていることを感じることはまずないでしょう。
USBメモリやSDカードとSSDの寿命が異なる理由
USBメモリやSDカードはデータの持ち運び、撮影した写真や動画の保存、スマートフォンのデータ置き場などの利用がメインとなっています。一般的には容量の何倍ものデータを書き換えるような使い方はまずしません。 ですがパソコンのOSが入っているメインドライブに使用する場合は全く異なります。OSのアップデートや更新、休止状態時メインメモリの内容をストレージに書き戻したり、仮想メモリをSSD内に作成したりします。他にもアプリケーションが一時作業領域(Temp)として使ったり、インターネットを閲覧するときに表示される画像なども一時保存されたりします。つまりUSBメモリやSDカードと違い、利用者の意思でデータを書き込む以外にも頻繁に読み書きが繰り返されています。こう聞くとSSDのほうが負担が大きくすぐに寿命を迎えてしまいそうですが、きちんと対策がされています。 少しでも寿命が長くなるようにSSDにデータを書き込むときは「ウェアレベリング」という処理がおこなわれています。ウェアレベリングはフラッシュメモリの特定部分だけに書き込みが集中し老朽化しないよう、SSDにまんべんなく書き込みをおこなうというものです。またWindows7以降にはSSDにOSをインストールした場合、SSDに負担を与えないようにデフラグ機能を自動的に無効にしたりする機能も追加されています。 SSD本体に積まれている機能やOS側の機能で、USBメモリにはないフラッシュメモリへの負荷軽減がされているので、SSDとUSBメモリの寿命は一概に比較できないのです。
SSDの寿命の目安となるTBWとは?
最近のSSDには寿命の目安となる書き込み可能な上限(総容量)を示した”TBW(Terabytes Written)”という値が表記されているものがあります。読んで字のごとく「~テラバイト(1TB=1兆バイト)書き込めますよ」という意味で、100TBWなら100テラバイト(=10万ギガバイト)が書き込める上限目安となります。 ストレージ容量が大きければ、それだけ分散して書き込めるためTBWもSSDの容量に応じて大きくなります。SanDisk(サンディスク)の「Ultra 3D SSD」なら250GBモデルが100TBW、500GBモデルが200TBW、1TB(1000GB)モデルが400TBW、2TBモデルが500TBWとなっています。 1TBモデルまでは容量に比例して2倍ずつになっているのに、1TBから2TBはなぜか100TBしか増えていません。そのあたりに現状のフラッシュメモリの限界があるのでしょうね。 ちなみにIntel(インテル)の上位機種である現行「Optineシリーズ」はTBWではなくテラバイトの1,000倍を基準としたPB Written(ペタバイト リトゥン)という表記がなされています。 ですがTBWという値は、販売されているすべてのSSDで公表されているわけではありません。同じサンディスクのSSDでも下位モデルや旧モデルにはTBWの数値は記されていません。またその数値も必ずその数値まできっかり書き込めるというものではなく、SSDを正しく適正に運用した場合の理論値ですので、M.2スロットに付けるタイプのSSDなどは排熱が適切でなく高温が長く続くなどで劣化が早まった場合、寿命が短くなる可能性があります。それらが心配な人はM.2スロット位置が熱くならなそうなマザーボードを選んだり、放熱が良くなるヒートシンク(放熱板)を付けたりしています。 人間でもそうですが健康に悪い環境に身を置いておくと、それだけ寿命が縮まるわけですからね。 引用&出典:
サンディスク公式 Ultra 3D SSD仕様
SSDの計算上の寿命
サンディスクの「Ultra 3D SSD」を例に取ると500GBモデルの場合、TBWは200となっているので単位をギガバイトに直すと200,000ギガバイトとなります。それを単純に365日(1年)で割ると1日あたりおよそ548ギガバイト書き込めることになります。毎日548ギガバイト書き込むなら1年ほどで寿命を迎えることになりますが……そんな大容量を書き込むことはまずありませんよね? 大型の3Dゲームなどでもせいぜい20ギガバイト程度です。それをSteamなどで毎日ダウンロードして書き込んでも、1万日……約27年ほどかかる計算です。 その倍の容量である40GB毎日書き込み続けても、ゆうに13~4年は持つ計算になります。というわけでSSDの寿命がHDDに比べて短いということはまずないと理論的には実証されています。 またHDDは記録する円盤(プラッタ)を回すためにモーターが内蔵されています。物理的に動くモーターはフラッシュメモリよりもわかりやすく経年で劣化するため、モーターの寿命が来てしまえばHDDはそこで終わりです。モーターが大丈夫でもデータを読み取る磁気ヘッドが動かなくなっても駄目ですし、事故や停電などで磁気ヘッドが円盤に接触して(落下以外では今のHDDではまずないですが)傷を付けても使えなくなります。物理的に動く部分が多ければ多いほど1か所駄目になるとそれでおしまいなので、物理的に動く部分がまったくないSSDのほうが壊れにくく、劣化にも強いわけです。まぁSSDも熱や落雷のサージなどでコントロール用チップが駄目になったらおしまいですがそれはHDDも同じことです。 SSDの出始めは容量が今のUSBメモリやSDカード(32GB)以下しかなかったため、酷使すると書き込める上限容量に達し、寿命を迎えることもありました。ですがコントローラーチップの性能が安定しプチフリーズがなくなった頃のSSD(インテル X25-M/2009年頃)は、各種対策が施され既にHDDより長い寿命を得ていました。そうでなければ心配性の筆者が20,000円以上も出して80GBしかないストレージを買ったりしませんよ。 筆者はその頃にSSDを初購入し、インテルの80GB、Transcend(トランセンド)の256GB、Crucial(クルーシャル)の500GBを買いましたが後半2つは現役です。インテルの80GBは容量不足で交換するまで、マメにS.M.A.R.T.(*1)で状態を見ていましたが、異常らしい異常はありませんでしたね。 *1…S.M.A.R.T.(スマート)は内蔵HDDやSSDの詳細な情報を見るための機能です。現在の温度、読み書きの際にエラーが発生したことがあるかなどを知ることができます。日本ではCrystalDiskInfo(クリスタルディスクインフォ)が最も有名です。SSD側が対応していれば寿命に関係する総書込量などを見ることもできます。
HDDの寿命はどのくらい?
HDDは初期不良個体は1年以内に故障、それ以外は3年が1つの区切りと言われています。3年を越えれば部品精度やモーターなどの劣化が少ない良品の証なので、5年あるいはそれ以上持つこともあります。 筆者は内蔵HDDを10台ちょっと使ってきましたが、うち壊れて交換したのが3台程度です。だいたい3~5年で壊れていました。外付けHDDは1~2年程度で壊れたものが1台あるので、平均しても体感でも外付けHDDは内蔵HDDよりも寿命は短いです。
外付けHDDのほうが壊れやすいのにはちゃんとした理由があります。外付けHDDはケースがプラスチックだったり放熱効率が悪かったりすると内部に熱がこもり、その熱で劣化がすすみ故障の原因になったりします。内蔵HDDはむき出しのまま外枠にネジなどで固定されているだけなので、全面を囲まれている外付けHDDよりは熱がこもりにくいのです。 また外付けにはHDDのデータをUSB経由で送受信するためのチップや基板が入っており、これが熱や経年劣化で故障することもあります。その基板が壊れただけなら、外付けケースから取り外してパソコンに直接繋ぐと普通に使えたりすることがあります。(筆者の現在使っている内蔵HDD1台がソレで、外付けだった頃と合わせて5年ぐらい使っています)
結局SSDとHDDはどちらが寿命が長いのか?
最近はHDDの性能も安全性も高まったので昔に比べると寿命も延びていると思います。それでも筆者がSSDを3台買うあいだにHDD1台がお亡くなりになっています。ですので個人的には読み書きエラーを1台とて起こしていない(MLCやTLCの)SSDのほうが耐久性が高く寿命も長いように思います。今後増えてくるであろうQLCのメモリを採用したSSDに関しては、また変わってくるかもしれません。 HDDはまともなものを作れる会社だけが残っているので、寿命や耐久性はある程度保証されます。ですがSSDはここ1年ほどで聞いたことがないメーカーの、より安価な製品も多く出てくるようになりました。そういったものは安いぶん質が落ちるため、正直寿命に関しては期待しないほうが良いでしょう。(ワゴンセールで売っている498~980円のUSBメモリとかと同様) とくに中国メーカーのものは仕様を偽装したり、他社メーカーの選別に落ちたフラッシュメモリを型番を削って搭載したり、偽装したりしたSSDが実際に出始めています。安さだけを見て購入すれば、安物買いの銭失いを体験することができるでしょう。SSDは大切なデータを入れるためのストレージなのですから寿命を気にするのはもちろん、信頼性の高いメーカーのものを買うことをおすすめします。 参考:
SSDチップのリマーク問題インテル回答(2018年10月)
安定寿命を期待できるSSDメーカー
・高いけれど信頼性の高い「SanDisk(サンディスク)」 ・技術力が高く、最先端のものを提供している「Samsung(サムスン)」 ・メモリメーカーとして実績とノウハウのある「Crucial(クルーシャル)」 ・高級路線に舵を切った「Intel(インテル)」 この4社が定番で、今後もこの4社のものを買っておけば大丈夫でしょう。 筆者はこれに ・安価だが安かろう悪かろうではない「Transcend(トランセンド)」 を加えて5候補としています。 サンディスク、サムスン、インテルはお値段高めなので筆者の場合、必然クルーシャルかトランセンドの2択になるんですけれどね。 ですが例えサンディスクのSSDや、故障率の低いHGSTのHDDを購入しても運悪くハズレ個体に合うこともあるでしょう。
CrystalDiskInfo
などを利用し、定期的にSSDの健康状態を確認すれば大事なデータを失わずにすむでしょう。 SSDはHDDと違って駆動音がないので「あれ?変な音がするな」と調子が悪いのに気づかず、突然死する確率が高そうなのは困りものですね。S.M.A.R.T.情報をマメにチェックしていつもより温度が高かったり、何度か読み書きエラーが生じていたら、即交換を考えたほうがよいです。
長期保存する場合はHDDとSSDどちらが良いか?
寿命に関してもう少し補足すると、記憶方式の違いでHDDとフラッシュメモリのデータ保持可能な期間が違います。HDDはプラッタと呼ばれる円盤に磁気でデータを書き込み、いったん書き込んだものはパソコンから外して放置しても消えません。フラッシュメモリは定期的に通電しないと中のデータが消えてしまうという性質を持っています コレを読んでいる人のなかにはゲームカセット内の電池が切れてセーブデータが消えてしまったという経験を持つ人もいるのではないでしょうか? 昔のゲームカセット内には電池が入っており、そこから電気が流れることでメモリ内にデータを保存しています。電池が切れるとメモリに電流が流れなくなるためセーブデータが消えてしまいます。 フラッシュメモリは電池がなくても記録を保持できますが、メモリ内に微量な電気を保持しており、それが完全に放電してしまうと中のデータが消えてしまいます。これがUSBメモリやSDカードを放置した場合に起こるデータの消失原因です。だいたい5~10年程度放置すると消えると言われています。作りが甘いものであれば3~5年程度で消えてしまうものもなかにはあるでしょう。 ですがSSDは常時パソコンに接続され、電気が供給されています。USBメモリやSDカードとは異なりパソコンから外して放置することもほとんどありません。ですのでUSBメモリなどのように完全放電してデータが消えることがほぼありません。ですが外付けのポータブルSSDなどの場合、常時パソコンに繋いでいるかどうかは人によって異なります。放置ぎみの人は1年に1度くらいはパソコンと接続して電気を流してあげるとよいでしょう。 「じゃあHDDなら一度データを書き込めば、パソコンから外して長期間保管しても安心だな!」と思うかもしれませんが、そうはいきません。電気で物理的に動くものは長期間放置するとその状態で駆動部分が固着して動かなくなることがよくあります。長期間使わなかった電化製品を久しぶりに動かそうとしたりしても動かなかったことはありませんか? HDDも同様でプラッタを回すモーターやデータを読み取るヘッドが放置により固まって動かなくなることがあるのです。全く動かさずに保管できるのはせいぜい5年程度でしょう。電気で動くものは何であれ、酷使しない程度に動かし続けたほうが寿命は長く保てるでしょう。 筆者の家にはサンディスクの128MBの古い(12~3年前の)USBメモリがあったので、試しにchkdskでテストしてみたり
Check Flash
で読み書きフルチェックをしてみました。結果エラーは出ず、SLCの長寿命が証明されました。数年ごとに思い出して通電させているのが良いのかもしれません。まぁいまさら128MB(0.128GB)のUSBメモリを使う場面はありませんし、異常はないとは言え大切なデータを入れたいとも思いません。
たまたま5年以上は確実に放置したPATA(E-IDE)の内蔵HDDも持っていたので、こちらも久しぶりにパソコンに繋いでみました。「スピンアップ(内部円盤の回転音)すらしなかった」と報告できれば上の説明を補強できると思ったのですが、認識して普通に読み込めてしまいました。サーバールームのHDD故障は室温の上昇よりも湿度の上昇のほうが危険性が高いと、以前ITニュース記事で読んだ覚えがあります。はからずもシリカゲルと一緒に密閉していたのが良かったのかもしれません。 参考:
ハードディスクが故障する元凶は熱ではなかった
– ZDNet Japan
SSDやHDDの寿命(故障の兆候)を見逃さないようにするには?
HDDは物理的に動く機械なので、スピンアップや読み書き時の異音、読み書き時間が異常に長くなったりすることで寿命が近いことを把握できます。ですがSSDの場合はまったくの無音ですし、読み書き速度が落ちたときには既に手遅れという可能性も高そうです。 可能な限りこまめにS.M.A.R.T.情報を確認してエラーが出ているか出ていないかをチェックするクセを付ければ、SSDが突然死する前に気づくことができるかもしれません。 筆者は心配性でこの記事を書いていて不安になったので、CrystalDiskInfoのショートカットをスタートアップに入れて毎日S.M.A.R.T.情報を確認するようにしましたよ。
※記事内の商品価格は弊社にて確認した時点の価格を表記しております。金額や内容の詳細は公式サイトをご確認ください。
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