知らなきゃ恥ずかしい?ハブとスイッチの違いと状況別の使い分け方法
「ハブとスイッチって何が違うの?」
「ハブとスイッチはどう使い分けたらいいのかわからない」
「ハブとスイッチの違いが説明できるようになりたい」
こんな疑問や不明点を持っている、ネットワーク初心者のあなたに向けた記事です。
この記事の中では、ハブとスイッチの違いからネットワークに関する基礎知識、状況別の使い分け方を紹介します。
この記事を読み終えると、ハブとスイッチの違いが理解でき、人に説明できるようになります。
ハブとスイッチの違いはほとんど無い?
現在においては、ハブとスイッチの基本的な動作に違いはほとんどありません。
昔のハブは物理層でのみ動作する機器であったため、接続した機器のすべてにデータを送信していました。
現在のハブはほとんどが「スイッチングハブ」であり、スイッチと同じくデータリンク層で動作していて、宛先を選択してデータを送信するようになっています。
スイッチは「L2スイッチ」とも呼ばれ、ハブと同じくデータリンク層で動作する機器です。同じように受信したデータは、宛先を選択して送信します。
ハブとスイッチは基本的な動作に違いはほとんど無いものの、厳密には別物です。
ハブとスイッチの違いについては後述しますが、ここでも登場している「物理層」「データリンク層」といった用語についても合わせて解説します。
覚えておきたいネットワークに関する用語
ハブとスイッチの厳密な違いについて説明する前に、覚えておきたいネットワークに関する用語について紹介します。
OSI参照モデル
国際標準化機構(ISO)によって作成された、通信機能のモデルのことを指しています。
この通信モデルの中に、物理層・データリンク層が含まれています。
昔はコンピュータのメーカーによって通信の規格が異なっており、メーカーが異なると通信ができないこともありました。
それでは困るため、国際標準化機構によって通信機能のモデルが作成され、現在ではこのモデルが標準となっています。
OSI参照モデルは7階層からなり、それぞれの階層で通信に関する決まりごとがありますが、ここでは1〜3層について説明します。
ハブとスイッチの違いを理解するためには、1〜3層の理解が必要です。
階層 | 階層名 | 役割 | 関連機器 |
---|---|---|---|
1 | 物理層 | 物理的なつながりに関する決まりごと | LANケーブルや光ケーブル、昔のハブ |
2 | データリンク層 | 直接つながっている機器と通信するための決まりごと。MACアドレスを使う | 現在のハブ、L2スイッチ |
3 | ネットワーク層 | ネットワークを介して目的の相手と通信するための決まりごと。IPアドレスを使う | L3スイッチ、ルーター |
4 | トランスポート層 | コンピュータのプログラム間でやり取りする仕組みの決まりごと | パソコン、サーバー |
5 | セッション層 | 通信の中断や再開などの流れに関する決まりごと | パソコン、サーバー |
6 | プレゼンテーション層 | アプリケーションに依存しないデータの表示に関する決まりごと/td> | パソコン、サーバー |
7 | アプリケーション層 | アプリケーションが通信を行うための決まりごと | パソコン、サーバー |
物理層では、単純な電気通信のための決まりごとがあり、その決まりごとを実現するための関連機器として、LANケーブルや光ケーブル、昔のハブが該当します。
データリンク層では、物理的に直接つながっている機器同士の通信を行うための決まりごとがあり、機器同士の宛先を判別する手段として、MACアドレスを利用します。
データリンク層に関連する機器が、現在のハブとスイッチです。スイッチに「L2」とついているのは、2階層目=Layer2のことを表しています。
ほとんどの場合、スイッチとはL2スイッチのことを指しています。
ネットワーク層は、ネットワークを介して目的の相手と通信をするための決まりごとがあり、宛先を判別する手段として、IPアドレスを利用します。
インターネットを始めとして、実際にあなたがパソコンを使って通信を行う相手は、物理的に直接つながっているわけではないですよね?
物理的な繋がりを越えて、論理的な繋がりを実現させるため決まりごとがネットワーク層であり、関連する機器として、L3スイッチやルーターが該当します。
厳密には、更に上位の4〜7階層の決まりごとを介して通信を行っていますが、ここではハブとスイッチの違いを理解する上で必要な階層だけを説明しました。
MACアドレス
ネットワーク上でパソコンなどの機器を識別するためのアドレスです。
ハードウェアに紐付いていて、IPアドレスと違って基本的には変更することができません。
ハブやスイッチは、直接LANケーブルで繋がった機器のMACアドレスを収集して覚えておくため、MACアドレスを使って宛先を判別します。
IPアドレスとMACアドレスの違いは、OSI参照モデルの階層で使用するアドレスの違いですが、郵便に置き換えて考えるとわかりやすいです。
IPアドレスは「東京都〇〇市〜」という住所に該当し、MACアドレスは「田中太郎」といった宛名に該当します。
たとえばインターネット上(日本)で、MACアドレス(田中太郎)を宛に手紙を出すことは難しいですが、IPアドレス(東京都〇〇市〜)からたどれば、目的の相手にたどり着けますね。
ストア&フォワード方式
ハブやスイッチの通信を転送する方式の一つで、通信のデータをハブやスイッチの中に一度ストア(格納)して、指定する宛先へフォワード(転送)する方式となります。
このときの宛先はMACアドレスのことを指します。
一昔前まではこの方式の実装有無が、ハブとスイッチの大きな違いでしたが、現在ではほぼすべてのハブに実装されています。
そのため、ハブとスイッチの基本的な動作に違いがなくなりました。
ストア&フォワード方式を実装していないハブが「バカハブ」「リピータハブ」などと呼ばれていましたが、現在のハブはストア&フォワード方式を実装している「スイッチングハブ」となっています。
スイッチは昔からストア&フォワード方式を実装しています。
VLAN(Virtual LAN)
物理的な接続とは別の仮想的なネットワークを構築する機能です。
1つのスイッチの中でネットワークを仮想的に分けることができ、同じスイッチに接続した機器同士でも通信をさせたくない場合に利用します。
多くはスイッチのポートごとにグループ分けしていて、指定のポートに繋がった機器同士の接続のみを許可するように設定します。
現在では、ハブとスイッチを区別する1つとして、VLAN機能の有無が挙げられるほど、スイッチの代表的な機能です。
スイッチはハブと何が違う?
ハブとスイッチの基本的な動作はほとんど同じですが、スイッチは「多機能であること」と「性能が高いこと」がハブとの違いです。
VLAN機能があればスイッチ?
スイッチが持つ多くの機能の中でも、VLAN機能の有無はハブとの違いの大きな差です。
ハブではVLAN機能は使えないので、VLAN機能があればまず間違いなくスイッチと言えます。
ただし、紛らわしいものの1つに「インテリジェントハブ」が存在しています。
インテリジェントハブはその名の通り、インテリジェント(高い知能、知性)なハブのことですが、VLANが使用できるものがあります。
インテリジェントハブは機能も多く、スイッチに近いハブですが、ほとんどスイッチと考えて良いでしょう。
インテリジェントハブのスイッチファブリックはハブ相当であり、業務用のL2スイッチと比べると性能は劣るため、多少性能が低いスイッチといった位置づけです。
スイッチはハブよりも性能が高い
スイッチファブリックの値一つとっても、性能に差があることがわかります。
スイッチファブリックとは、スイッチが一度に処理できる帯域のことで、値が大きいほど大量の通信を処理できることを表します。
業務用のネットワーク機器を製造する世界的メーカー「Cisco」のL2スイッチと、家庭用のコンピュータ製品を製造する「Buffalo」のハブを比較してみます。
階層 | ポート数 | スイッチファブリック | 値段 |
---|---|---|---|
Cisco Catalyst 2960 | 8ポート | 20Gbps | 52,800円(税込) |
Buffalo LSW6-GT-8NS Hub | 8ポート | 16Gbps | 6,490円(税込) |
※弊社にて確認した時点の価格を表記しております。金額や内容の詳細は公式サイトをご確認ください。
同じ8ポートの機器ですが、一度に処理できる帯域の差が4Gbpsもあります。
現在のパソコンを使ったネットワーク通信の上限値は1Gbpsであるため、パソコン4台分の通信上限値ほどの差があります。
ハブとスイッチは状況別に使い分ける
ハブとスイッチの違いがわかったところで、具体的にどのように使い分けたら良いのでしょうか?
ここでは状況別に使い分けの例を紹介します。
ネットワークに複数のパソコンを接続できればいい
ハブを選択しましょう。
一般家庭や小規模オフィスなどで、単純に接続するための窓口を増やすことを目的とする場合に、ハブを選択します。
もちろん、スイッチを選択しても問題ありませんが、スイッチはハブに比べて高価です。
この場合は、ネットワークに繋ぐことさえできればよく、多くの機能は使わないため、スイッチを選択すると宝の持ち腐れとなってしまいます。
ネットワークを分けて複数のパソコンを接続したい
スイッチを選択しましょう。
中規模、大規模オフィスなどでは、部署ごとにネットワークを分けたい場合があります。その場合はVLAN機能を使うため、スイッチを選択します。
VLAN機能でネットワークを分ける例としては、お金に関わるファイルのやり取りをする経理部の人だけがアクセスできるネットワークを作る、といったものがあります。
同じフロアで同じスイッチに接続していても、仮想的にネットワークを分けることができるため、スイッチを選択するようにします。
サーバーとのネットワークの中継地点にしたい
スイッチを選択しましょう。
サーバー同士の接続やサーバーとパソコンの間のネットワークの中継地点として、ハブかスイッチを選択する場合は、スイッチを選択します。
サーバーに対する通信量は非常に多く、中継地点とするスイッチにも相応の処理能力が求められます。ハブでは能力不足であるため、ネットワーク全体の遅延に繋がりかねません。
また、サーバーを接続することを考えると、スイッチ同士をつなぎ合わせてネットワークを構築することも考えなくてはならず、VLAN機能を始めとするさまざまな機能を使う必要もあるため、ハブでは性能面でも機能面でも不足してしまいます。
ハブとスイッチがやっていることはほとんど同じ
時代とともにハブが進化したことで、ハブとスイッチの基本的な動作の違いはほとんどなくなりました。
しかし、ハブとスイッチは性能や機能面で大きく差があり、厳密には別物となることを理解してください。
ネットワーク環境は時代とともに変化し続け、現在ではネットワークを使わないオフィスはないでしょう。
ネットワークは難しいものだと考えている人が多いため、ネットワークに関する事柄には関わりたくないと思っている人も多いものです。
この記事の中でハブとスイッチの違いが理解できたあなたは、さまざまな場面でハブとスイッチのどちらを使うべきか、最適な選択ができるようになっています。
その知識を活かして、仕事でもプライベートでもハブとスイッチを使いこなしてもらいたいです。